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​こうして私たちは『みんなの日本語初級I・II 翻訳・文法解説マラーティー語版』を作った|特別フォーラム|第12回

日時 :2021年3月14日

講師 :ジャヤシュリー•ボパトカル、足澤ミーナ、ハリ・ダムレ、千田聡美、マナシ・シルグルカル

    バクル・ワイディヤ、プラシャント・パルデシ

会場 :オンライン(ZOOM)

対象者:日本語教師

参加費:無料

企画 :アルン・シャム

​申込者:133名(12カ国)

内容

『みんなの日本語初級I・II第1版本冊』(初版1998年)は世界で広く使われている日本語教材の一つである。この教材に準拠した副教材の一つとして『みんなの日本語初級I・II 翻訳・文法解説英語版』が用意され、その中国語、韓国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、ビルマ語への翻訳版も刊行され、世界中で日本語学習に役立てられている。当該教材はインドでも広く使用されているにも拘わらず、そのインド諸語版は整備されてこなかった。英語を得意としない学習者や母語で日本語を学びたい学習者のニーズに応えるべく我々は2017~18年にかけて『みんなの日本語初級I・II 翻訳・文法解説マラーティー語版』を作成し、刊行した。本発表ではその作成の舞台裏を紹介する。

参加者からの声

Mayuresh Kulkarni

3月14日(日)に「こうして私たちは『みんなの日本語初級I・II 翻訳・文法解説マラーティー語版』を作った」といったオンライン講演に参加させていただきました。マラティー語は私の母語で、大学生時代に日本語を学んだので、当テーマは興味深かったです。

 

日本語学習世界では「みんなの日本語」が評判がよく、日本語能力試験といったらこの教科書が一番人気があります。当教科書が近頃西インドでの日本語教育中心となったプネ市の凄腕の日本語教師たちによりマラティー語に訳されました。先生方から経験話を聞く際に自分が勉強しているときのことを思い出せないわけにはいかなかったです。勉強中にわからない文形または言葉が出て、教科書に検索したら、意味が英語にしか載ってなくて、英語苦手で意味が通じないときはよくあった。今回の活動のおかげで今度マラティー語をベースで日本語を学ぼうとしている学生さんは円滑で日本語覚えられると思って嬉しいです。

講習で翻訳活動中の面白いことや直面された課題について詳しく説明されました。その話を聞いて、教科書に載っている会話や文形の直訳が全てではないこと十分理解できました。例えば、受け身形だと、日本語では自然に聞こえるのですが、それをマラティー語に直訳すると、不自然に思われます。そういう場合の先生方の工夫について面白く説明されました。日本語の小説が好きで、たまにはマラティー語に訳しますが、翻訳するたびの言葉の選択の悩みがよく分かります。言葉の選択問題は教科書に載っている割と簡単な文型に対しても出てくるとは最初はとても思えなかったが、先生方の説明を聞くと、なるほとというしかなかったです。

先生方が手間暇かけて2年間に渡って当プロジェクトを完了しましたが、対象は英語が理解できる都会の学生さんではなく、マハラシュトラ州の津々浦々の子供たちだそうです。出発されました教科書が学生さんに無料で配達されています。この本をベースで学生さんが日本語が上手に話せることになると思います。

 

Murakami Yoshifumi, Japan Foundation New Delhi

 七人の侍の皆さん、本当にお疲れさまでした。厳しい納期や、文字化けの問題など、多くの障害を乗り越えてこの計画を実施されたみなさんに、あらためて賛辞を送りたいと思います。

私の参加した理由は「どうして『みんなの日本語』なの?」という疑問でした。メイン会場では「インド人は文法が好きだから」という声を聞いたほか、ブレイクアウトの意見交換会では「『日本語初歩』に比べて、『みんなの日本語』はとてもすばらしい」という声も聞くことができました。『みんなの日本語』はご存じの通り、20世紀の中頃に語学教育の中心だったオーディオリンガルの考えをベースにした教科書ですが、地域によっては改革派の教科書という位置づけの場合もあるんですね。そういう意味で、インドで多くの人が『みんなの日本語』を支持する理由が理解できました。

これからは『みんなの日本語』から離れてオリジナルの教科書の作成も計画されているとのことで、ぜひ応援したいと思っております。もしコミュニカティブ・アプローチや行動中心アプローチなどの考えも取り入れられる場合は、喜んで協力させていただきたいです。

 

Hiroko Ozaki, Japan Foundation New Delhi

 JLESA特別フォーラム第12回「こうして私たちは『みんなの日本語初級I・II翻訳・文法解説マラーティー語版』を作った」に参加して、大変興味深いお話を伺うことができました。

 共同翻訳者の七人の侍による翻訳プロジェクトのスケジュール、具体的な作業工程との詳細と、日本語からマラーティー語に翻訳するうえで、両者の文法や文体に関わる問題をどのように扱ったか、また、文法解説を書くためにマラーティー語の文法用語を新たに作ったこと、プロジェクトを通しての学びと気づきなど、様々な難しい課題に翻訳者の方々がどう取り組んだかを詳しく知ることができ、大変勉強になりました。この日本語からマラーティー語への翻訳プロジェクトで出てきた課題は、日本語からインド諸語を含む他の言語に翻訳する場合にも参考になることと思います。翻訳作業そのものに加えて、フォーマット作業のご苦労も大きかったということもわかりました。300ページにもなる高品質の翻訳本の出版プロジェクトを1年で成し遂げた七人の侍の皆様のご努力に心から敬意を表します。

 この教科書がすでにマハラーシュトラ州の地方の学校で活用されて、これまで日本語教育が行われていなかったところで中等教育の子供たちが日本語を学び始めているというご報告も、教材を作っただけでなく、それを教育に活用して社会貢献につなげようとしているところがすばらしいと思いました。

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