​コーパスに見る学習者の学び方―誤用はなぜ生まれるのかー|特別フォーラム|第10回

日時 :2021年1月17日

講師 :迫田久美子

会場 :オンライン(ZOOM)

対象者:日本語教師

参加費:無料

企画 :アルン・シャム

​申込者:190名(31カ国)

内容

「この本はおもしろいだった(→おもしろかった)」のように日本語学習者の言語には、さまざまな誤用が現れます。これらの誤用は、教師が教えた文法とは異なる学習者が独自に考えた文法です。学習者がどのような文法を作るのか、なぜ作るのかを実際の学習者コーパス(言語データ)の例を見ながら、分かり易く解説します。また、誤用を少なくするための工夫や話したり書いたりする運用能力を高めるための工夫についても紹介します。

参加者からの声

Himalee Adhav, Savitribai Phule Pune University, India

 

本講義では、外国語を学習している際、誤用がなぜ生まれるのかについてよく理解できました。また、コーパスを使うことによって、我々教える側も、間違えやすい文法や表現を予測できるし、さらに学習者の立場から、どうして混乱してしまうのかもわかるようになると思います。

 

それから、学習者ごとに独身の文法・言語体系(中間言語)が存在することも理解できました。誤用は、母語の関与によるものだけではなく、言語能力や学習環境などによっても生まれるので、学習者を継続的に観察する必要があることに気づき、学習者のコーパスを作成したり、使用したりする必要について改めて考えさせられました。

 

その上、さまざまな国からの参加者と意見交換ができ、非常に面白かったです。次回のフォーラムも大変楽しみにしております。

Report by Anubhuti Chauhan, University of Tsukuba, Japan

 

本講演では、①誤用の捉え方、 ②学習者の学び方と誤用の原因及び③学習者言語分析におけるコーパスの重要性について論じられた。

①誤用の捉え方:誤りを犯さずに習得に成功することは不可能であり、誤用は、第二言語を学ぶ過程で必然的に生じるものであることが述べられた。また、学習者言語を解明する際に重要な手掛かりにもなるため、決して否定されるべき対象ではないことが主張された。

②「学習者は自分の文法を作る」:誤用の要因としては、「母語」「学習者環境」「言語能力(レベル)」「学習ストラテジー(単純化・固まり化)」が挙げられ、固まり化を中心に 「に・で」の誤用・正用に関する実験調査が紹介された。固まり化とは、例えば、「位置+に」(先行名詞が位置を表す言葉の場合は「に」を付与する傾向)や「地名+で」(先行名詞が地名を表す言葉の場合は「で」を付与する傾向)のようなチャンク形成のことである。固まりがなぜ生まれるかというと、人間の記憶・言語処理能力が要因として考えられている。

③「コーパスから学習者の文法が分かる」:コーパスは学習者の言語使用を考察する手段であり、本講演の後半では、I-JAS(多言語横断コーパス;http://lsaj.ninjal.ac.jp/)が紹介された。 I-JASの特徴としては、タスク別・学習者能力別・学習者環境別・母語別で検索することが可能であり、発話タスクの音声データも公開されていることなどが挙げられる。最後に、日本語指導の観点からタスクの種類と誤用の関係について述べられ、「指導を考えるには学習者を理解することが重要」であることが述べられた。